一年目の教科書
TOOLS & BUDGET

最初に買うべき農機具

1〜3反の自然栽培なら、いきなりトラクターは要りません。無農薬・無肥料なので防除機も肥料散布機も不要です。本当に要るものと、借りて済ませるもの、そして実際にいくらかかるのかを、実売価格で並べました。

結論から1反・手作業中心なら約9万円、3反・少し機械化して約84万円です。差の大半は中古の田植機とバインダーで、この2つを借りるか委託すれば3反でも15万円台に収まります。最初の一年は買わずに済ませる方向で考えてください。

買う前に考える3つのこと

  1. 耕起と代かきは委託でいい

    トラクターは新品なら軽く200万円を超えます。1〜3反のために持つ機械ではありません。作業委託の料金相場は、福井県農業会議の令和8年版で耕起・代かき15,700円/10a、宇都宮市で5,000円/10a(税別)。3反でも年間1.5万〜4.7万円です。10年借りてもトラクター1台に届きません。

  2. 乾燥・籾すりも委託でいい

    乾燥機は中古でも12万〜24万円、籾すり機は小型で13万円から。委託なら福井で乾燥9,800円+籾摺3,500円/10a、宇都宮市で乾燥調製780円/30kg。1反あたり1万3千円ほどです。年に一度しか使わない機械は、原則として買わないと考えてください。

  3. 除草の道具にだけは投資する

    自然栽培で唯一ケチってはいけないのがここです。除草に失敗すると、その年の収穫がまるごと消えます。チェーン除草機(自作で約1.5万円)と田車(約1.9万円)は最初の年から用意してください。

A. 育苗

品目価格選び方・備考
プラ育苗箱159円/枚
30枚 6,798円
1反で約20枚。稚苗用が汎用で使いやすい
育苗培土999円〜
18L
必ず「無肥料」表記のものを。肥料入りは自然栽培では使えません
塩水選用 比重計1,498円〜
2,998円まで
比重1.13前後が読める目盛のもの。生卵で代用もできますが精度は落ちます
浸種の容器家庭用のポリ容器で十分。専用品の価格は確認できませんでした
買わずに済ませる苗そのものをJAの育苗センターに注文する手もあります(宇都宮市の参考額で890円/箱)。ただし無肥料の苗を注文できるかは要確認です。自然栽培では自分で育苗するのが基本になります。

出典:モノタロウ 水稲育苗箱比重計宇都宮市 農作業標準賃金 令和8年

B. 耕起・代かき

1〜3反なら管理機は車軸ローター式の4〜5馬力で十分です。ホンダ こまめ F220(2026年1月発売)が希望小売価格で121,440〜142,010円。中古なら整備済みで7万円前後から出ています。

品目価格備考
ホンダ こまめ F220121,440〜142,010円2026年1月発売・税込希望小売価格。仕様により4種
中古 管理機68,250円〜92,400円ホンダF210 68,250円/ヤンマーMT30DX 68,249円(整備済)
代かきレーキ・トンボ4,398〜6,598円アルミス RS-500/RS-800。均平は除草剤の代わりになる重要作業
耕起・代かきの委託5,000〜15,700円/10a宇都宮市5,000円(税別)/福井県15,700円。30a未満は5〜30%加算の場合あり

出典:Honda こまめF220ノウキナビ 中古管理機モノタロウ レーキ福井県農業会議 令和8年版 稲作標準料金

C. 田植え

1反なら手植えで足ります。ひもを張って目印をつけ、疎植(坪40〜50株)で植えていきます。3反を超えると手植えは現実的でなくなるので、中古の歩行型田植機かレンタルを検討してください。

品目価格備考
中古 歩行型2条377,999円〜409,500円共立みのるX-2/クボタJP20(整備済)。50aまでなら歩行2条で十分
中古 歩行型4条189,000円〜417,900円三菱MPC4が最安値帯
JAレンタル 歩行4条1日 22,000円
半日 11,000円
JA金沢の例。搬入を自己手配しない場合+5,500円
田植え定規・目印ひも価格を確認できませんでした。ひもと竹で自作するのが一般的です

出典:ノウキナビ 中古田植機JA金沢 農機レンタル料金表

D. 除草 — ここが自然栽培の本番

最優先で揃えるチェーン除草機と田車。この2つで合計3.4万円ほどです。除草の手順にあるとおり、雑草が見えてからでは遅く、発芽初期に7日おきで叩くのが要です。道具がなくてタイミングを逃すのが、一年目でいちばん多い失敗です。
品目価格備考
チェーン除草機(自作)材料費 約15,000円アングル2m+ヒル釘+チェーン約80本。製作1日、重量7kg。農研機構が作り方を公開
チェーン除草機(市販完成品)市販品の価格は確認できませんでした
田車(手押し中耕除草機)18,980〜20,878円太昭農耕機。1〜3反ならこれが費用対効果で最良
歩行型 中耕除草機 2条149,800〜164,780円大竹製作所。3条は159,800〜175,780円。3反では回収しにくい
草取鎌・鋸鎌269〜1,198円全鋼鋸鎌269円/ステンレス鋸鎌1,198円

出典:農研機構 チェーン除草機の製作モノタロウ 手押し除草機モノタロウ 鎌

E. 畔の管理

畔草刈りは5月から9月まで数回。出穂の2週間前までに刈り終えるのがカメムシ対策の要点です。3反程度+家まわりなら18Vの充電式でも足りますが、連続して使うならバッテリーは2個要ります。畔が長いならエンジン式の25cc級を。

品目価格備考
エンジン式 刈払機19,800〜49,800円ECHO EGT221 19,800円/CGT261 25,800円/ハスクバーナ226RJ 49,800円
充電式 刈払機24,800〜35,800円工進SBC-1825LB 24,800円/マキタMUR196SDWF 35,800円
畦塗り機不要1〜3反なら鍬で畦塗りできます。レンタル料金は確認できませんでした

出典:カインズ 刈払機

F. 水の管理

品目価格備考
水口ゲート・堰板1,498〜4,498円深水管理は除草の要。水位を確実に保てるものを
溝切り器(手押し)25,278円ホクエツ。ジョレン型なら2,638円。JAレンタルは2,200円/回
田植え長靴2,968〜7,038円福山ゴム/コーコス 2,968円。アトム グリーンマスター 7,038円

出典:モノタロウ 水口栓溝切り機田植え長靴

G. 収穫と調製

ここがいちばん機械にお金のかかるところです。そしていちばん委託しやすいところでもあります。1反なら手刈り+はざ掛け、脱穀以降は委託、という組み立てが現実的です。

品目価格備考
稲刈り鎌269〜1,398円1反の手刈りは1〜2日仕事。人を頼むと早い
はざ掛け資材10,980〜18,980円南栄工業「ほすべー」スチール/アルミ。天日干しは食味が上がります
中古 バインダー225,225〜517,000円ヤンマーBE-30 231,000円/クボタRE25-D 262,499円
小型 脱穀機79,980円〜オギハラ工業。足踏み式は流通を確認できませんでした
唐箕49,980〜81,980円手動49,980円/動力81,980円
小型 籾すり精米機130,000円〜15kgを30〜40分・100V電源。上位機は380,000円
中古 乾燥機120,000〜242,000円いずれも成約済み表示。相場の参考として
乾燥調製の委託780円/30kg
または 13,300円/10a
宇都宮市780円/30kg/福井 乾燥9,800円+籾摺3,500円/10a

出典:ノウキナビ 中古バインダーモノタロウ はざ掛け脱穀機・唐箕本田農場 籾すり精米機農キング 中古乾燥機

H. 安全装備 — 削らないでください

刈払機は農作業事故の上位常連です。防護面・イヤーマフ・すね当ては一式で5千円ほど。ここを削る理由はありません。

品目価格
ヘルメット+防護面+イヤーマフ 一式4,298〜4,498円
防護面のみ1,798円
すねガード・レガース1,498〜1,998円
防振手袋1,098円

出典:モノタロウ 刈払機保護具

予算セット

① 最低限セット(1反・手作業中心)— 約 89,500円

品目金額
育苗箱 20枚3,180円
無肥料培土 18L×32,997円
塩水選種計1,498円
均平トンボ RS-5004,398円
田植え長靴2,968円
チェーン除草機(自作)15,000円
田車18,980円
鋸鎌1,198円
刈払機 ECHO EGT22119,800円
保護具一式+すね当て5,996円
水口ゲート2,528円
はざ掛け「ほすべー」10,980円
合計89,523円
借りる・委託する耕起と代かきは委託(5,000〜15,700円/10a)。田植えは手植え。脱穀・籾すり・精米はJAか近隣の農家に委託(乾燥調製780円/30kg)。初年度の総支出は10万円台に収まります。

② 少し機械化セット(3反)— 約 842,000円

品目金額
育苗箱60枚・培土×9・トンボRS-800・水口×2 ほか約 30,000円
田車×237,960円
チェーン除草機(自作)15,000円
刈払機 CGT261・保護具31,796円
はざ掛けアルミ18,980円
手押し溝切機25,278円
中古 歩行2条田植機(みのるX-2)377,999円
中古 管理機(ホンダF210)68,250円
中古 バインダー(ヤンマーBE-30)231,000円
合計約 842,000円
この3つを借りると15万円台になります太字の3点(田植機・管理機・バインダー)で約68万円、全体の8割です。田植機はJAレンタルで1日22,000円、耕起はトラクター委託、収穫は手刈りかバインダーのレンタル。一年目は借りて、二年目に自分に本当に必要な機種を見極めて買うのが失敗しない順序です。

レンタル制度と補助金

JAの農機レンタル(例)

JA機械料金
JA金沢
令和6年6月1日
19馬力トラクター1日 22,000円
歩行4条 田植機1日 22,000円
管理機1日 5,500円
刈払機1,100円
JAあつぎ20馬力トラクター半日 3,883円
管理機(耕うん)半日 1,034円
循環式乾燥機1回 5,500円(燃料別)

JAあつぎの半日3,883円という水準を見ると、トラクターを買う理由はますます薄くなります。お住まいの地域のJAにレンタル制度があるか、まず問い合わせてみてください。

新規就農者向けの資金

就農準備資金・経営開始資金は、月額13.75万円(年最大165万円)。準備資金は最長2年、経営開始資金は最長3年で、原則50歳未満が対象です。夫婦で就農する場合は月20.625万円になります。機械購入そのものは直接の対象外ですが、経営発展支援事業(機械・施設導入への補助)と併用できます。

出典:JA金沢 農機レンタルJAあつぎ 農業機械レンタル就農準備資金・経営開始資金(2026年度)

価格について掲載価格はすべて調査時点で実際に表示されていた金額です。農機具の価格は変動し、中古は一点ものなので同じ値段では買えません。目安としてご覧ください。田植え定規、市販のチェーン除草機完成品、足踏み脱穀機、畦塗り機のレンタル料金は、価格を確認できませんでした。

次に読む

この教科書は無料で公開しています

取材・データ整備・ツールの開発と更新は、すべて自費でやっています。役に立ったと感じていただけたら、コーヒー一杯分から応援していただけると励みになります。いただいたぶんは、品種データの拡充とサーバー費用にあてます。

コーヒーを一杯おごる

Buy Me a Coffee のページへ移動します(別タブで開きます)。
もちろん、応援なしでもすべての内容をお使いいただけます。