これから米をつくろうとする人が、最初に知っておいたほうがいい数字を並べました。景気のいい話ばかりではありません。ただ、現状を正確に知ることは、悲観するためではなく、自分がどこに立つのかを決めるために要ります。すべて公的統計に出典をつけています。
水稲の作付面積は1969年の317.3万haがピークでした。2024年産は135.9万ha。半世紀あまりで6割近くが失われた計算になります。収穫量のピークは1967年の1,425.7万tで、2024年産は734.5万tでした。
ただし直近は少し様子が違います。主食用米でみると令和6年産(2024)が125.9万ha・651.9万tだったのに対し、令和7年産(2025)は136.7万ha・718.1万tと9年ぶりの高水準まで戻りました。米価の高騰を受けて作付が増えたためです。令和8年産(2026)の作付意向は136.3万haで、ほぼ横ばいと見込まれています。
2025年農林業センサスで、基幹的農業従事者は103.6万人でした。2015年の175.7万人から10年で41%減っています。平均年齢は67.7歳、65歳以上が69.6%を占めます。農業経営体数は82.8万で、うち稲作を主とするものが54.4%です。
この数字は、新規就農者にとっては悪い話ばかりではありません。田んぼを貸したい・譲りたいという人が各地にいるということでもあります。田んぼの探し方は教科書トップにまとめました。
1人あたりの年間消費量は、1962年度の118.3kgがピークでした。2024年度は53.4kg。ピークの45%です。日本人は60年で、食べる米の量を半分以下にしました。
出典:農林水産省 食料需給表(令和8年5月公表)/茶碗の杯数は精米1杯65gとして換算した参考値です。
2024年の夏、スーパーの棚から米が消えました。南海トラフ地震の臨時情報などをきっかけとした買いだめと、端境期の在庫の薄さが重なったためです。その後、米価は2年にわたって上がり続けました。
玄米60kgあたりの相対取引価格(全銘柄平均)は、令和5年産の15,315円から令和6年産25,179円、令和7年産36,803円へと、2年で2.4倍になりました。小売の店頭では2025年10月に5kg 4,573円のピークをつけています。
政府は2025年に備蓄米を約59万t放出しました。うち約31万tが買戻し条件付きの一般競争入札(玄米60kg・税込の加重平均22,477円)、約28万tが随意契約です。随意契約は2025年5月、当時の小泉進次郎農相が「店頭5kgで2,000円程度」を掲げて実施しましたが、実勢価格は4,000円台で高止まりしました。
そして2026年に入り、流れが変わりました。2026年8月17〜23日週の店頭価格は5kg 3,156円。前年同期比で620円、16.4%の下落です。2026年8月には鈴木農相が、放出した備蓄米21万tの買い戻しを表明しています。
ここがいちばん正直に書くべきところです。令和6年産の生産費は、個別経営体で10aあたり132,112円、玄米60kgあたり15,814円でした。労働時間は10aあたり21.26時間です。組織法人経営体では60kgあたり12,090円、50ha以上の大規模層では約9,000円まで下がります。規模がすべてを決める構造になっています。
| 区分 | 10aあたり全算入生産費 | 玄米60kgあたり | 10aあたり労働時間 |
|---|---|---|---|
| 個別経営体 | 132,112円 | 15,814円 | 21.26時間 |
| 組織法人経営体 | 97,057円 | 12,090円 | 12.31時間 |
| 50ha以上(参考) | — | 約9,000円 | — |
水田作経営の農業所得を自営農業労働時間で割った「時給」は、2021〜22年に10円、2023年に97円という水準でした。経営体別(2022年)では、主業経営体が892円、5ha未満はマイナス430円、つまり赤字です。50ha以上でも500円弱にとどまります。
自然栽培は後者、つまり単価で勝負する道です。手間は慣行栽培より確実に増えます。その手間に見合う値段で買ってくれる人を、栽培と並行して見つけていく必要があります。
令和6年度の荒廃農地は25.7万ha。うち再生利用が可能なものが9.8万ha、再生困難なものが15.9万haです。再生可能な面積は平成29年の9.2万haから増えており、「まだ使えるのに使われていない田んぼ」が毎年生まれ続けていることを示しています。
中山間地域は全国の耕地面積の38.1%、総農家数の44.7%を占めます(2020年)。自然栽培に向いた、水がきれいで小さな区画の田んぼは、多くがこの区分に入ります。中山間地域等直接支払交付金の対象になる場合もあるので、地域の農政担当窓口で確認してみてください。
令和5年度の有機農業の取組面積は3.45万ha、耕地面積の0.8%です。うち有機JAS認証が2.18万ha、JAS未取得が1.27万ha。2017年の2.35万haから年4,400haずつ増えています。
みどりの食料システム戦略は、2050年に有機農業を耕地面積の25%(100万ha)にする目標を掲げています。現状の30倍です。2030年の中間目標は6.3万haです。
| 区分 | 面積 | 年次・注記 |
|---|---|---|
| 有機農業 合計 | 3.45万ha | 令和5年度/耕地面積の0.8% |
| うち有機JAS認証 | 2.18万ha | 令和5年度 |
| 水稲(化学肥料・農薬不使用) | 60,624ha | 2020年センサス/35,244経営体・JAS外を含む広義 |
| うち有機JAS認証の水稲 | 3,063ha | 2020年度 |
| 2050年目標 | 100万ha | みどりの食料システム戦略/耕地の25% |
令和6年の新規就農者は43,500人でした。うち49歳以下は15,720人で36.1%です。内訳は新規自営農業29,580人、新規雇用10,180人、新規参入3,750人。雇用就農だけが前年比+9.5%と伸びており、自営(−2.5%)と参入(−2.1%)は減っています。いきなり独立するより、まず農業法人に雇われて技術を身につける人が増えている、ということです。
2025年の米の輸出は46,573t・138.8億円で、いずれも過去最高でした。主な仕向地は米国13,522t、台湾9,896t、香港6,361tです。政府は2030年に35万tという目標を掲げています。2024年実績の約8倍です。
ただし46,573tは国内生産の0.6%程度にすぎません。輸出が国内の需給を大きく変える段階にはまだありません。
2023年産の1等米比率は61.3%で、記録的な低さでした(作物統計ベースの確定値を59.6%とする集計もあります)。2024年産は77.1%、2025年産は76.8%に回復しています。原因は登熟期の高温による白未熟粒です。
2024年の日本の年平均気温は1991〜2020年平均を1.48℃上回りました。長期の上昇率は100年あたり1.44℃です。この教科書の工程表ツールが、全国一律の暦ではなくその地点の実測気温から日付を計算しているのは、この変化に対応するためです。出穂後20日間の平均気温が27℃を超えると白未熟粒が増えるため、品種選びと田植え日のずらし方が、これまで以上に効いてきます。
数値はいずれも調査時点で公表されていた最新値です。統計は改定されることがあります。
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