順番に読む必要はありません。まず工程表をつくって自分の田んぼの日付を出し、そこから必要なページに飛ぶのが早道です。
最寄りのアメダス地点・品種・田植え日を選ぶと、もみまきから秋起こしまでの予定日が並びます。印刷とカレンダー取り込みに対応。
つくる → 🌱13の工程を、目的・手順・コツ・つまずきやすい点の順に。塩水選から稲刈りの適期判断まで。
読む → 🌾28品種を出穂期・積算温度・耐冷性・いもち病抵抗性で比較。その土地の気温で登熟しきる品種の選び方。
選ぶ → 🛠1反なら約9万円、3反で約84万円。実売価格と中古相場、そして借りて済ませる方法。
見積もる → 📊作付面積・担い手・米価・生産費。令和の米騒動と2026年の価格反落まで、公的統計で。
知る → 📜稲作の伝来から1959年の除草剤導入、そして自然農法の系譜まで。出典つきの年表。
たどる →自然栽培の米作り
農薬・化学肥料・除草剤を使わずに、全くの初心者でも一年目から収穫までたどり着くための道しるべ
「無農薬・無肥料の米づくりは難しい」と言われます。けれど実際には、失敗の原因のほとんどは知識ではなく段取りです。いつ・何を・なぜやるのかがあらかじめ分かっていて、除草の初動さえ逃さなければ、初めての年でも収穫までたどり着けます。
このサイトは、田植え日を決めるとあなたの田んぼ専用の作業暦がその場でできあがり、それぞれの作業のやり方とつまずきどころを一つずつ確認できるようにつくられています。
市町村の農業委員会・農地バンク、JA、そして地域の知り合いづてが主な入口です。初心者が最優先で確認すべきは水。水路から自由に入水・排水できるか、日当たりは良いか、前の耕作者が除草剤や肥料をどれくらい使っていたかを聞いておきましょう(自然栽培への切り替え1〜2年目は地力が安定しないことがあります)。通いやすさも大切です。除草期の6月は週2〜3回田に行くことになります。
初めての年は1畝(約100㎡)〜1反(10アール)がおすすめです。1反で穫れるお米はおよそ4〜6俵(240〜360kg)。ご家族が一年に食べる量としては十分すぎるほどです。「もっと広く」は二年目からで間に合います。
| 最低限そろえる | 長靴(田植え用の田靴)・鎌・スコップ・チェーン除草具(単管とチェーンで自作可、3千〜1万円)・田車(中古5千円〜、新品2〜3万円)・刈払機(3〜5万円) |
|---|---|
| 借りる・頼む | トラクター(耕運・代かき)、田植機、コンバインと乾燥は、機械を持つ近隣農家さんやJAへの作業委託が現実的。1反あたり合計2〜4万円程度が相場です。 |
| 苗 | 一年目は育苗まで自分でやるか、自然栽培仲間から苗を分けてもらうかの二択。自信がなければ苗は譲ってもらい、二年目から塩水選・薄まき育苗に挑戦するのも良い順序です。 |
※ 手植え・手刈り(はざ掛け)なら1畝規模で機械なしでも可能です。体験としては最高ですが、1反を超えるなら機械の力を借りましょう。
もみまき〜育苗の世話で数日、田植え1日、6月の除草が週1〜2回×1時間半を1か月半、畔草刈りが月1回、水見が週2〜3回×15分、稲刈り1日。勝負どころは6月の除草だけで、あとは「見に行く」ことが仕事の大半です。
肥料を入れない田では、「肥料を効かせて多収する」ために育種された現代品種より、少ない養分でも自力で根を張る昔ながらの系統が力を発揮します。在来種・固定種なら自家採種ができ、毎年種を採り続けるほどあなたの田に適応した稲になっていきます。工程表の品種選びで★が付いているのが、ここで紹介する品種です。
| 朝日(旭) 晩生 | 岡山生まれの在来系。無肥料でも収量が安定し、西日本の自然栽培で最も定番。あっさりと上品な食味で、コシヒカリ系とは別系統の味わいです。 |
|---|---|
| 亀の尾 中生 | 明治生まれの在来種で、コシヒカリ・ササニシキの祖先にあたります。冷えに強く東日本向き。酒米としても人気で、自然酒の蔵元からの引き合いもあります。 |
| イセヒカリ 晩生 | 伊勢神宮の御田で見出された強健種。茎が太く倒伏や病気に強いため、初めての自然栽培でも扱いやすい品種です。 |
| ササシグレ 中生 | ササニシキの親品種。少ない養分でよく育ち、あっさり系の澄んだ食味。自然栽培ファンの支持が厚い品種です。 |
| ハツシモ 晩生 | 岐阜の大粒種。草勢が強く倒れにくい、晩生の安心株。冷めてもおいしく、おにぎりや寿司向き。 |
| 農林22号・農林48号 | 化学肥料が普及する前に育成された系統で、少肥適性が高い。多くの現代品種の祖先でもあり、「自然栽培の隠れた名品種」と呼ばれます。 |
| ハッピーヒル 中生 | 自然農法の提唱者・福岡正信さんが育成した品種。強健で穂が大きく、無肥料でも多収が狙えます。 |
| ササニシキ 中生 | あっさりした食味の代表格。肥料を効かせると倒れやすい品種ですが、無肥料ではむしろ健全に育ちます。和食・寿司との相性は抜群。 |
| 黒米・赤米(古代米) 晩生 | 野生の強さを残した最も強健な稲。やせた田でもよく育ち、彩り米として販売単価も高いため、小面積の副作物にも向きます。 |
迷ったら「地域で実績のある品種」×「種籾・苗が手に入るか」で決めましょう。西日本なら朝日・イセヒカリ・ヒノヒカリ、東日本なら亀の尾・ササシグレ・ひとめぼれあたりが入口になります。コシヒカリも「無肥料だと倒れにくくなる」ため自然栽培での実績は豊富です。種籾や苗は、近くの自然栽培生産者や自然栽培の種苗ネットワークから譲り受けるのが確実で、その土地に馴染んだ種が手に入ります。そして収穫したら、一番よく実った株から来年の種を採ること。自家採種こそ自然栽培の品種選びの完成形です。
育苗箱に使う土(培土)を篩(ふるい)にかけ、石や草の根、わらくずを取り除いて、粒のそろったやわらかい土に仕上げる作業です。苗づくりの土台をつくる、一年の米づくりの最初の仕事です。
網目5mm前後の篩で土をふるい、床土(とこつち)用と覆土(ふくど)用に分けて確保します。土はよく乾かしてから篩うと目詰まりせず、さらさらと仕上がります。育苗箱1箱あたり床土・覆土あわせて4〜5kgほど必要です。
選別した種籾を育苗箱にまき、苗を育て始める作業です。「苗半作(なえはんさく)」と言われるとおり、米づくりの半分は苗で決まります。
まず塩水選(えんすいせん)で軽い籾を除き、充実した種籾だけを選びます。その後3〜7日ほど浸種して芽出しをし、育苗箱にまいて覆土します。
トラクターなどで田を耕し、前年の稲わらや刈り草を土に混ぜ込みながら、土をやわらかくほぐす作業です。
稲わらは秋〜冬のうちに土に還しておくと、田植えまでに十分分解が進みます。春の耕運は入水の2週間以上前までに済ませ、わらの分解ガスが苗を傷めないようにします。
田に水を入れて土をかき混ぜ、トロトロの状態にして表面を平らにならす作業です。水持ちを良くし、苗を植えやすくします。
荒代(あらじろ)と植え代(うえじろ)の2回に分けて行うのが基本です。荒代で土を大まかにかき混ぜて雑草を発芽させ、植え代でその芽を練り込んでから田植えをすると、雑草を一世代減らせます。
育てた苗を田に植える、一年で最も大切な節目の作業です。ここからの日数を基準に、除草や水管理の予定が決まっていきます。
葉齢4〜5葉まで育てた成苗を、1株2〜3本という少ない本数で、坪40〜50株の疎植(そしょく)にします。植え付けは浅植えを基本とし、深植えは分げつを遅らせるので避けます。
ロープにチェーンを吊るした道具を田面に沈め、人が引いて歩くことで表土をかき混ぜ、発芽したばかりの雑草を浮かせて枯らす除草法です。
雑草がまだ目に見えない「糸状期」に行うのが最大のコツです。田植えの2〜5日後に1回目、その後7日おきに2〜3回繰り返します。苗の上を通しても、活着した苗は倒れてもすぐ起き上がるので心配いりません。
回転爪のついた手押しの除草具を条間(じょうかん・株の列の間)に押して歩き、土を撹拌して雑草を浮かせる、昔ながらの除草法です。
条に沿ってまっすぐ押し進めます。往復しながら全ての条間を通すため、10アールあたり2〜3時間が目安です。土をコロコロと転がすように、一定のリズムで押すのがコツです。
エンジン付きの水田中耕除草機(歩行型・乗用型)で条間の土を撹拌し、残った雑草を除きながら土に酸素を入れる作業です。
チェーン・田車で抑えきれなかった雑草が対象です。除草爪が土を数センチの深さでかき回し、雑草を根ごと浮かせます。歩行型で10アールあたり1〜1.5時間、乗用型なら30分ほどです。
機械や道具で取りきれなかった株間の雑草を、田に入って手で抜く作業です。自然栽培の米づくりで最も地道で、最も確実な除草です。
コナギ・ヒエ・オモダカなどを、根ごと抜いて泥に深く押し込むか、田の外に持ち出します。特にヒエは稲に似ているので、葉の付け根(稲には毛がある)で見分けます。
田を囲む畔(あぜ)の草を刈る作業です。風通しを良くし、畔の点検を兼ねながら、シーズン中に数回行います。
刈払機で畔の内側・上面・外側を刈ります。刈った草は畔に敷いておくと畔の乾燥と崩れを防ぎ、やがて土に還ります。
田の水を一度抜いて土を軽く乾かし、稲の生育を切り替える水管理です。無駄な分げつを止め、根を深く張らせます。
目標の茎数(1株20本前後)に達したころに落水し、田面に軽くヒビが入る程度まで7〜10日乾かします。その後は間断かん水(水を入れては自然に減らす繰り返し)に移ります。
茎の中で育った穂が外に出てくる、稲の一生で最大の節目です。穂が出た日の午前中に開花し、2時間ほどで受粉が終わります。田の半分で穂が出た日を「出穂日」と呼び、ここから収穫日を数えます。
出穂前後2週間は稲が最も水を必要とする時期です。「花水(はなみず)」と呼ばれるたっぷりの水を切らさないようにします。作業としては見回りが中心で、田に入る作業はしません。
穂に養分を送り込む登熟(とうじゅく)期間の水管理です。この1か月あまりの管理が、米の粒の充実と食味を決めます。
出穂後2週間はたっぷりの水を保ち、その後は間断かん水に切り替えます。水を入れて2〜3日で自然に減るのを待ち、また入れる――この繰り返しで、根に水と酸素を交互に届けます。稲刈りの約10日前に最後の落水をします。
実った稲を刈り取る、一年の集大成の作業です。刈るタイミングの見極めが、米の味と品質を最後に左右します。
穂全体の8〜9割の籾が黄金色になり、穂の根元にわずかに緑が残るころが適期です。早刈りは未熟米(青米)が増え、刈り遅れは胴割れや食味低下のもと。コンバインで刈って乾燥機にかけるか、バインダーで刈ってはざ掛けにします。
稲刈りの終わった田を秋のうちに耕し、稲わらや刈り草を土にすき込む作業です。一年の締めくくりであると同時に、翌年の米づくりの始まりでもあります。
コンバインで刈った場合は、細かく裁断されたわらを田全体に均一に広げてから、10cm程度の浅耕でざっくりとすき込みます。わらが乾いてから、田が乾いているうちに行うのがコツです。寒くなる前に済ませると、冬の間に微生物がわらをゆっくり分解してくれます。
除草剤を使わない防除の基本は、どの草にも共通の「予防の三点セット」です。①代かきの均平、②深水管理(5〜7cm)、③発芽初期の撹拌除草(チェーン→田車→中耕の7日間隔)。この3つで雑草の8割は抑えられます。残り2割は草の性質に合わせて対処します。一年草は「種を落とさせない」、塊茎(球根)で増える多年草は「秋起こしで塊茎を弱らせる」が原則です。
| 深水管理(予防) | 田植え直後から水深5〜7cmを保ち、コナギ・ヒエの発芽自体を抑えます。毎日の水見だけでできる、すべての除草の土台です。 |
|---|---|
| チェーン除草 | 田植え後2〜10日、7日間隔で2回。まだ見えない糸状期の芽を浮かせて枯らします。約30分/10a。単管+チェーンで自作可(3千〜1万円)。 |
| 田車(たぐるま) | 田植え後2〜3週目。条間の育ち始めた草を撹拌して浮かせます。2〜3時間/10a。中古5千円〜。中耕効果で根張りも良くなります。 |
| 中耕除草機 | 田植え後3〜4週目の仕上げ。条間を整えながら土に酸素を入れます。歩行型で1〜1.5時間/10a。レンタルや共同利用も。 |
| 手取り除草 | 6〜7月に随時。株間と取り残しに対する、最も地道で最も確実な方法。道具は鎌一本。種を落とす前に抜くのが鉄則です。 |
| 秋起こし(翌年の予防) | 収穫後に耕して塊茎雑草を冬の寒さにさらし、わらを分解。翌年の草の量を確実に減らす「来年のための除草」です。 |
※ 基本は「深水+チェーン→田車→中耕+手取り」の組み合わせです。ほ場の条件や労力に応じて足し引きしてください。
※ 雑草の顔ぶれは田んぼごとに違います。一年目に「どの草が多い田か」を観察して記録しておくと、二年目からの対策が的確になります。雑草は敵であると同時に、その田の土の状態を教えてくれる指標でもあります。
先輩たちが一年目に実際にやってしまった失敗は、ほぼこの5つに集約されます。逆に言えば、これだけ避ければ収穫までたどり着けます。
最後にもう一度。一年目の成果は「収量」ではなく「収穫までたどり着くこと」です。自分の田で穫れた一杯のごはんの味は、何にも代えがたいものです。二年目はその経験が、必ずもっと良い米にしてくれます。
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